“A digital illustration of a steampunk library with clockwork machines, 4k, detailed, trending in artstation, fantasy vivid colors”

AIはソフトバンクの追い風となるのか?

近頃は見かけなくなったが、黒幕で覆われた車が高速で走る映像が映されて、その後に、〇〇から高速自動車が何月何日に発売が表示される、こんなテレビ広告がよくあった。典型的な広告手法の一つである予告広告である。人々の期待値を高めて発売時に一挙に販売数を伸ばす手法だ。スマフォのリーク画像などもこの広告の一種である。

予告広告が難しいところは、下手をすると詐欺的なものになりかねないことである。だから一般的には高速自動車など意味不明な言葉が使われることになる。高速かどうかは個人の感覚によるので、文句を言われる危険性が減るから。

日本の企業で最近で気になるところは、予告的な情報を流しすぎではないか、と思われる点だ。今の時点でそんなことを言って大丈夫なのか、そんな疑念である。TOYOTAの固定電池に関する発表にも感じたことなのだが、TOYOTAは実際に電池工場を作るようなので、まあギリギリでセーフというところだろう。

もっと気になっている企業がある。ソフトバンクである。ソフトバンクほど浮き沈みが激しい企業は珍しい。ある年には莫大な利益をあげて次の年は大赤字など。これの繰り返しなのだが、最近は不調が目立っており大幅な赤字が続いている。虎の子であったアリババの株も売却した始末である。

こんなこともあり最近は目立った動きもなかったソフトバンクではあるが、最近の株主総会では反転攻勢など急に勇ましくなった。話題のAIが追い風になるとの話である。本当なのだろうか。先のことはわからないが。

ソフトバンクが根拠もなく勇ましい話をしているわけではない。ソフトバンクが期待しているのが、傘下にある英国のコンピュータチップメーカーである。AIとコンピュータチップメーカーと何の関係があるのか。疑問に思う人がいるだろうが、AIでの変革はChatGPTに代表されるソフトだけではなく、コンピュータマシンにも大きく関係することなのである。

コンピュータの性能を決めるもの。CPUであり、どんなコンピュータを購入するか検討するときは、このCPUの性能が一番気になるものである。注意しなければならないのは、コンピュータの性能を決めるのはCPUだけではないことである。もう一つ重要な機能がGPUと呼ばれるものだ。CPUだけで動作しているコンピュータは多いが、同じCPUでもGPUが搭載されているコンピュータでは、その操作感が全く違う。同じ程度のCPUだから安い方を選ぶ。とんだ間違いである。多少高くてもGPUが搭載されているコンピュータの方を選ぶべき。作業感覚が全く違うから。

このGPUを作っているメーカーはCPUを作っているメーカーに比較して、脇役的な存在であった。具体的にはCPUメーカーであるIntelに比較してのGPUメーカーであるNVIDIA。ChatGPTに代表されるAIでもGenerative AIの登場によりこの構図が大幅に変化したのである。AIでは多量のデータを処理する必要があるが、この処理に使われるのがGPUだからである。脇役ではなくなったわけである。NVIDIAの株価が高騰している。このことの反映である。

ソフトバンク系のチップメディアにもこの変化でチャンスを掴むことができるのではないか。ソフトバンクが反転攻勢など強気な発言をするようになった要因の一つである。ソフトバンクにケチをつけるつもりはないのだが、そんなにうまくいくのかどうかは、疑問である。GPU自体を発明したのはNVIDIAであり、多分特許によりその技術は守られているのだろう。全く別のGPU的機能を持ったチップをソフトバンク系のチップメーカーが開発できるのか。開発には莫大な費用が想定されるので、開発できたとしてもすぐにソフトバンクの業績に反映することはないのではないか。

チップメーカーだけがソフトバンクの稼ぎではない。ソフトバンクはベンチャーキャピタルのようなもので、次の課題となるのが将来性のあるAI関連企業を見つけることができるかどうかである。こちらで成功すればソフトバンクは現在の苦境を乗り越えることができるだろうが、これもまた困難な道ではないのか。

話は変わるが韓国ドラマでスタートアップなるものがある。よくある話で逆境にあった人間あるいは人間たちが一発逆転で成功を手にする、そんな話である。ドラマとしては私は面白いと思わなかったが、興味があるテーマが取り上げられていた。AIである。そのAIも私が以前に考えていた面白くもないAIなのである。

例えば人の顔の自動認識やあるいは書き文字の自動認識などなど。それなりの社会の役に立つかもしれないが、私個人には関係ない話ではないか。そんな風に思っていたAIなのである。世間一般のAIに関しての認識もそんなものではなかったのか。

ChatGPTが注目を集めているのはなぜか。個人の活動に大いに役立つAIであるから。これまでの産業的なAIとは全く違った概念で登場した。だから多くの人がびっくりしてまた注目を集めたわけである。

自動車の自動運転など従来的な機械的AIもこれからどんどん変化するだろう。Generative AIはまだまだ未知数のところが多い。AIとソフトバンクは騒いでいるのだが、どんな企業に投資するのかその目をソフトバンクは持っているのだろうか。当然のことながら、世界中の投資企業はこの分野に関心を強めている。知識や経験を持った人材も集めていることだろう。競争の激しい世界である。

AIが何かしらソフトバンクの専売特許のような発言が続いているのだが、最初に書いた詐欺まがいの先行広告にならない根拠は何か。危ない危ない話だと私は思っているのだが。